私の空気がうまい家暮らし

SAiN Anniversary Essay by Owner

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空気がうまい家?日々をつむぎ 想いをつづる #3

 アトピーに苦しんだ息子も音響熟成木材と幻の漆喰の家に引っ越してからは、症状がみるみる改善され、別人となりました。これで、リフォームをした目的は達成です。ところが、その辺りから私は、不思議な感覚を感じる様になりました。それは、家が可愛い…という感覚です。
 当然、自分で施工したものでもありません。(株)ハウス工房さんに全てをお任せして施工していただいた家なのですが、我が家に来られる方々が「何これ?いい香り。それに素敵。」と言ってくださると嬉しいのです。ここで、一般的な感覚で言えば少し謙遜して「いえいえ、たいしたことありませんよ。」というところなのでしょうが、この言葉が言えないのです。何だか、そんな事を言ってしまうと家に失礼な気がしてならなかったのです。結局、私はそんな場であっても「そうでしょ。一般的な家とは全く別物ですよ。」なんて、自慢気に答えていたのです。親バカならぬ家バカと言ったところでしょうか。

 そんな感覚で生活をしていると、家が私たち家族にたくさんの事を教えてくれるのです。暮らしながらにして、自然界のルールを学ぶことができました。
 もっとも嬉しい学びが、「多少の問題は気にしなくてもいい」ということです。当時、二人の息子は、コマ回しにはまっていました。昔ながらのアルミのコマ、木製のコマ、喧嘩ゴマ…挙句の果てには、通常のコマの3〜4倍もの大きさのコマも家で回し始めたのです。コマが投げられると「ドン」っと鈍い音がします。息子たちは、上手く回ると大喜び。こんなことが、早朝から繰り返し行われるわけです。床は、見事にコマの凹みがたくさんできていました。
 ところが、数日もすれば、凹みが消えているのです。この事に気付いた時は深く感心したものです。でも、よくよく考えると、これに感心している自分がおかしいってことに気づいたのです。

 私は毎年、庭の木々の剪定を行います。後々のことも考えて割とバッサリと剪定していきます。それでも、木々は枝を伸ばし、葉をつけていきます。人間も動物も多少の怪我なら放っておいても治癒していくものです。と、いう事は多少の問題があっても「元に戻って当たり前」という感覚が普通であるはずです。けれども、私は床の凹みが治っている事に驚いたのです。
 それだけ、私達の生活は、自然から遠のいているという事に気付かされたのです。自然界ではごく普通の事なのに、普通の事が起きて驚いている自分がいるのです。とてもシンプルな事ではありますが、この事に気付いた事は、私達家族が大きく変化するきっかけにもなったのです。

 当たり前の自然のルールをせめて自分の息子達には感じて欲しい。そう思って、野菜作りや狩猟にも関わり始めました。人はずっと土と共に生きてきた動物だからでしょうか、息子達はたくさんの事を学んでいました。

 土は温度差が緩やかであること、野菜は元気が無くなった時に一気に虫にやられてしまうこと、蕎麦の芽は蕎麦の味がすることなど…
 こんなことを次々と言い出す息子を見ていると、教師として関わっている子どもと何かが違うなぁと感じ始めたのです。そこで、学校で関わる子どもの生活と私の息子たちとの生活を改めて比較して、驚いたことがあるのです。
 それは、「自然のままのものに触れていない」ということです。もっと言えば、「土を踏まなかった日」が都会では日常だということです。
 食品は、便利さを求めるあまり不自然なものが随分増えてきました。衣服の多くも工業的に生産された綿が使われています。そして、住まいも道路も…。改めて私達の身の周りの生活を見ると、「自然のまま」がないのです。
 人間も本来は、自然界の一員であるにも関わらず、そこと接点をもたない生活をしているのです。でも、こうした視点で我が家を見ると、とにかく自宅に帰りさえすれば「自然のまま」が私たち家族を受け入れてくれるのです。こうした環境が毎日ある人と全くない人。10年・20年と生活をしていくことでどれほどの違いが生じるのでしょうか。

 今、教育の現場は大変な状況を迎えています。なかなか席に座れない子ども、真面目に勉強をしても頭に入りにくい子ども、いじめの問題…。私は小学校で彼らと付き合いながら、教科の学習も指導してきました。もちろん、道徳的なことも。けれども、現代の子ども達の様子を見ていると、「もっと本質的な部分に気付いて欲しい」と大人にメッセージを投げているように感じたのです。息子がアトピーでそれを表現したかのように。

 KAIKENの家は、体感されるとその良さは十分に感じられると思いますが、私にとっては、これからの社会を変えるものなのです。「自然のまま」が私たち人にとってどれほど重要なのか気づかせてくれたのですから。私は、住まいを通して、こうしたことが存分に語れる仲間が増えると、子ども達の未来ももっと面白いものになると信じています。

 きっかけは、息子がアトピーで、リフォームをした。周りの人からすればただそれだけのことかもしれませんが、私にとっては、家はたくさんのことを教えてくれた息子と同じ存在なのです。

◉おわり・・・装い新たに続編計画中。ご期待ください。

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