私の空気がうまい家暮らし

SAiN Anniversary Essay by Owner

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空気がうまい家◉日々をつむぎ 想いをつづる #2

 今夜、安心して寝られる場所がある。
 現代の豊かな社会では、当然のことでしょう。
 ところが、たった一歳程度の息子は、私たち家族に安心して眠れる住まいがどれほど重要なのか教えてくれたのです。

 見栄えと価格だけを意識してリフォームした中古マンションの我が家は、化学物質が蔓延していました。
 それが人体に大きな影響を及ぼす事を息子は、酷いアトピーを発症するという形で私たちに教えてくれたのです。
 「この問題を回避するには、住まいを変えるしかない。息子も安心して生活できる住まいはないのだろうか」という思いで工務店巡りをしている中で、音響熟成木材や幻の漆喰に出会ったのです。

 アトピーで肌がボロボロの状態である息子は、見栄えと価格だけを意識した我が家(中古マンション)では、ぐっすり眠ることがありませんでした。
 数分寝たかと思えば、痒みが浮上し、掻きむしるために出血も絶えませんでした。
 ところが、(株)ハウス工房さんのご協力のもと、音響熟成木材と幻の漆喰の空間を体感させていただくと、そこでは息子はぐっすりと眠るのです。
 「そんなの偶然だ」という気持ちもあったので、何度も体感をお願いしたり、敢えて長時間滞在するということもお願いしたりしました。
 どの体感の仕方でも、息子はぐっすりと眠ったのです。
 この事実は、とても嬉しいことでありますが、これを認めるということは、当時住んでいた中古マンションの存在を否定することにもなります。
 息子が苦しむ原因は、はっきりと分かったけれども、同時に帰宅することが「恐怖」へと変わるのです。
 私たち家族に迷う程の猶予はありませんでした。
 いつまでも恐怖のマンションで生活することはできません。
 それに、緊急避難的に借りた古い物件に長年住む、といったイメージももつことはできませんでした。
 だからといってマンションのローンも抱えていた上に、音響熟成木材と幻の漆喰の家を手に入れようとすることは、無謀な気がしてなりません。
 何度も銀行に足を運び、相談に乗っていただきました。
 その上で、「これなら何とか生活もしていけるだろう」と決意をし、正式にリフォームを(株)ハウス工房さんにお願いしました。

 ここまで事が運ぶと、もうワクワクが止まりません。
 通勤中も新しい住まいを妄想し、帰宅後は何度も書店に足を運び、妄想を楽しむ材料を入手する日々です。
 そして、抽象的な言葉でイメージを伝えると具体的な形となった図面が提案されるという過程を存分に楽しみました。
 思考したものが具体的な形になっていく…。
 そんな過程の全てを見ることができたのです。

 ただ、問題はこうしてリフォームプランを立てている間も、施工が行われている間も、「私たち家族が安心して過ごせる場所がない」ということでした。
 緊急避難的に借りた物件は、あまりにも古く、化学物質の揮発は終了していると思われたのですが、今度はカビ臭いという問題もありました。
 これまで中古マンションとはいえ、現代的なキッチンに、新しいフローリングの家に住んでいた者が、老朽化が激しく、床が歪み、カビ臭い家で生活をしなければならないというのは、苦痛でしかありません。
 何かと理由を見つけて家族で不必要に外出もしていました。
 カビが原因だったのでしょうか、この緊急避難場所でも息子はぐっすり眠ることはなかったのです。

 (株)ハウス工房さんも事情を十分に理解してくださっていたので、少しでも早く施工が完了するように至るところで工夫をしてくださいました。
 そして、ついに念願の日はやってきました。

 「鍵をお渡ししますね」

 やっとここまで辿り着くことができたのです。
 当然、引っ越しをすることになるのですが、荷物より、とにかく息子の移動を一番に行いました。
 そして、リフォームが終了したばかりのガランとした部屋で、息子と妻が一足先に生活をスタートさせたのです。
 この日、アトピーでずっと苦しんできた息子は、初めて「自分の家でぐっすり眠った」のです。
 しかも、これまでの不十分な眠りを取り返すかのように…。

 ついに安心して眠れる場所が家族のものになったのです。
痒がるあまり、夜中に外に連れ出して散歩するなどといったことから解放されるのです。
 もちろん、翌日以降も息子はしっかりと眠り、痒がることも激減しました。
 そして、皮膚はみるみる綺麗になっていったのです。
 この変化を目の当たりにすると、「安心して眠れる住まいがある」という、一見、当たり前の様なことがとても重要なことに見えてきたのです。

 そして、この素晴らしい環境で長年生活をしていると、アトピーの克服以上に住まいは人に多大な影響を与える…
 そんなことにも気付かされたのです。

(#3へつづきます)

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