SAiN 50 ANNIVERSARY MESSAGE

#3 幻の漆喰と音響熟成木材 誕生秘話

 サイン50号到達記念特集号第3回、今回は弊社の商品群の誕生秘話をご紹介させていただきます。

 まず「幻の漆喰」です。読者の皆様の中にはご存知の方も多いかと思いますが、このサインが発刊された当初から常時掲載している記事があります。「無添加というだけでは健康住宅と言えない?」。自然素材(無添加)だけでは本当の意味での健康住宅はつくれません(詳しくはSAiN52号3ページの記事をご参照ください)。

 真の健康住宅をつくる為には日々の生活の中で発生するニオイや化学物質を、壁や天井等で吸着させ、そして分解する必要があります。構想当時は分解能力を持つ建材が日本中に無く、それならばと弊社で研究開発して世に送り出そうと考えました。0から1へ、容易なことではありませんでした。

 まず手掛けたのはビニールクロスに代わる日本の気候風土に適した材料の選択を行い、日本の伝統的な塗り壁の一つである漆喰に分解力を持たせる研究です。

 しかし17年前は分解に関する知識はほとんどなく、当時発表されていた光触媒の技術を利用して汚れやニオイを分解できるという理論に着目し、光触媒についての勉強を開始。原理の親水化現象で材料の表面に分解機能を持たせるという方法を思いつきましたが、結局この方法では、表面が劣化してしまえばその機能は失われ、長期的な効果が望めません。半永久的に効果を持続できる方法が必要でした。その効果を生み出すことの出来る触媒を探し、出会ったのが光だけでなく熱にも反応する触媒でした。

 改良に改良を重ねて出来上がったのが現在の幻の漆喰。弊社の発展の基盤とも呼べる商品に育ちました。空気汚染や花粉症、アトピー、鼻炎等で苦しんでいる方々に喜んでいただいています。その後の発展形として、外壁用の「幻の漆喰 そとかべ」や、将来の職人不足に対応した、特別な技術がなくても施工ができる「幻の漆喰 ピュアケアウォール」も市場へ送り出すに至りました。

 次に「音響熟成木材」です。健康住宅づくりで大切なことは、病気を予防し、病気になっても回復を早めてくれるような、そんな素晴らしい素材を使用すること。

 私は19歳から材木店の経営に携わっており、先人たちから杉材は人間の生命に一番近い木であると聞かされていました。その杉材で人間の免疫を高めることができないか、と研究を開始。私は木に対する考え方を我々人間と同じような立ち位置で考えています。地球上に生息する同じ生物であるということです。つまり生きている木材製品の開発です。

 20年程前から木材の乾燥には機械乾燥が用いられるようになり、業界の主流となっていきました。高温で負荷を掛けて乾燥させるため、木がミイラ化されて死んでしまいます。私はどうにかして生きたままで水分を抜くことができないかを最大のテーマとして取り組みました。

 多くの困難に直面しましたが、そこでたどり着いた方法が、水に音楽の波動を与え反応させる方法でした。まるで熟成していくように、適度に水分が抜け、必要な油分やエキスはしっかりと残ります。庫内の温度は常温に近く、今までの熱乾燥の理論を真っ向から打ち破る方法を確立しました。

 研究当初は全てが未知の世界。音楽の選曲、音量、室温など、導き出さねばならない答えが山積みでした。テストプラント(熟成庫)の図面作成にも頭を悩ませました。考えすぎて眠れない日もありましたが、常に考えていたことが功を奏したのか、突然夢の中にアイディアが浮かび、それをノートにまとめ、晴れてテストプラントづくりへと移行することができました。最初の材を入れて2週間、含水率20%になった材を取り出し検品して驚きました。芯材が一枚も割れていないという、これまでの常識では考えられない奇跡が起きていたのです。最高の木材でした。

 開発した当初は音楽にモーツァルトを採用していましたが、10年程前からそれをバッハへと変更し、現在に至っています。変えた結果、油分やエキスの残量が増え、経年美化が著しく向上いたしました。音楽の波動で水分を抜く方法に成功した木材でしたので「音響熟成木材」と命名し、商標登録。その後、九州大学、綿貫教授の研究により、杉の木には免疫グロブリンA(※)を高める効果があることが発見され、その内容が新聞記事にて発表されました。理論が裏付けされたようで大変嬉しく感じました。
※細菌毒素やウイルスに対して生体を守るための第一次防御を担っている

 また、地震に強い木材として、そして腐れにくい木材として、さらに付加価値も立証されていき、まさに健康と安全を持ち合わせた素材へと進化していったのです。

 長文となりましたが、正直書き足りないエピソードがまだまだたくさんあります。また機会がございましたら、ぜひご紹介させていただきます。最後までご拝読いただき、ありがとうございました。

[#4に続きます]

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