今から三十八年程前のことです。熊本県の上天草地方を大規模な集中豪雨が襲いました。当時何千人もの人々が被災し、大変な惨事となったこの自然災害。人々の心に大きな傷跡を残し、現地は甚大な被害を受けました。被害状況を知りたくても当然の様に通信手段は寸断され、現地の情報は全く入って来ません。友人の安否すら確認出来ない状況で、災害の恐ろしさを改めて痛感いたしました。
ですが黙って手をこまねいているわけにもいかず、私は祈る気持ちで車を飛ばし直接現地の状況確認に向かうことにいたしました。途中、松島町の教良木地区を越えるルートを通り、友人の住む姫戸町へ入る予定で車を走らせていたのですが、内野河内地区へ差し掛かったところで、私は目の前の状況に驚愕いたしました。なんと、そこにあるべきはずの道路が消えて無くなっているではありませんか。山が動いて道路を覆ってしまったらしく、それ以上先へ進むことが出来なくなっていたのです。山が動くとは信じがたい現象だと思いますが、山林がそのまま移動していると考えてください。結局陸路を諦める他なく、海路での上陸を余儀なくされたのでした。
現地の痛々しい状況を思い出すと、今でも胸が苦しくなります。山肌は削られ、巨石が転がり、集落の家は見る影も無く瓦礫の山と化していました。正に自然災害の巨大さと恐さをまざまざと見せ付けられ、全身が震える思いでした。その後も南九州地方では、鹿児島県竜ヶ水地区、熊本県水俣葦北地区と集中豪雨による災害が頻繁に起こり、多くの被害を残しました。最近では山口県周南地区で起きた集中豪雨が新しい記憶として残っています。ただ以前に比べ南九州での被害は少なくなってきたように感じます。その反面、関東地方や東北地方での被害が多くなってきており、災害の発生地域と規模が徐々に変化しているのがうかがえます。この集中豪雨の原因の一つとしてよく挙げられているのが「地球温暖化」です。最近では「ゲリラ豪雨」という言葉も出始め、ある一点に集中して豪雨が起こり、突然で予測が出来ない現象が多く確認されています。
このような集中豪雨を始めとした自然災害に対して、これまでの常識的な考えでは通用しないように思えます。その自然災害の中でも私が最も警戒しているのが台風による災害です。九州の離島で育った私は、子どもの頃から台風には非常に敏感です。ここ二年程、九州には大規模な台風が上陸していません。通常台風は夏から秋に掛けて九州の西側(東シナ海)を通り、秋口から太平洋側を通過するルートで進行していました。台風の経路も地球温暖化の影響でしょうか、東日本に直接向けた進路を取るようになり、非常に不気味な現象が続いています。これまでも地球温暖化の影響を受け、海水の温度は上昇傾向をたどってきました。特に1990年以降からの記録では長期的な傾向を上回る上昇をみせており、この様な状況下で発生する台風などの災害は膨大なエネルギーを蓄え、今後はさらに規模が増大していくことが予測されます。近々、超大型の台風が発生するような気がしてなりません。
台風が多く上陸する九州・四国地方に比べ、関東や東北の地域で見られる家造りには台風への対策が十分なされていないように感じます。雨風の影響が増大している東日本はこれまでの常識を見直し、いつ起こるか予測も付かない災害へ備える必要があると考えます。お住まいの地域の地形、位置の再確認や避難経路等の調査を行い、万が一のときに慌てない様に危機感を持った行動を取りましょう。現在起こっている大規模な災害は、これまで人類が行ってきた環境破壊に対して、地球が発しているメッセージなのではないでしょうか。我々生物が生きていられるのも地球の奇跡的な環境のおかげです。人間一人ひとりの行動が環境に与える影響をもう一度見直しましょう。大切な命を守るために・・・。
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