社長の行動

社長コラム

「しばしもやすまず、槌打つ響き」。これは童謡「村の 鍛冶屋」の冒頭の歌詞です。私の子どもの頃は、どこの町にも鍬や鎌、鉈などの農作業具を作ったり、修理を行う鍛冶屋さんがいました。ですがその後、農作業具の大量生産と機械化が普及し、町から鍛冶屋さんの姿は消えてしまいました。同じように、竹を割り編んで、笊や籠などの台所用品を作っていた竹屋さんも、プラスチック製品の勢いには押され、衰退してしまいました。


私は熊本県上天草市で生まれました。有明海と不知火海に面した漁業と海運業の町です。近所は漁師さん達の集落で、正月やお盆ともなると、百隻は超す程の漁船が港を埋め尽くしていました。今ではこの面影は全くありません。当時は各集落に一軒以上の造船場があり、多くの船大工さんが働いていました。漁船だけでなく、中には100t超の貨物船や客船を造っている造船所もありました。船を造る材料は長い材料が多く、現地で杉の丸太を木挽きさんが大鋸(大きいノコギリの意味)で挽いている姿や流線型の形にする為に、チョウナ掛けを行っている大工さんの姿は、今では見ることは出来ない光景です。漁船はFRP船に、貨物船は鋼船に変わり、船大工さんもほとんどいなくなりました。


全くその姿を見かけなくなってしまったのが、麦藁屋根の葺き替えをする屋根替職人さん。子どもの頃を思い出すと、屋根替や新築工事などは集落で協力し合って行っていたように思います。家の新築は大工さんが仮小屋を建て、そこで墨付けや手刻みを施し、材料の加工を行っていました。当時の子ども達はその作業風景を見ながら、知らず知らずのうちに、材料のことや道具の種類、作業工程を覚えていました。また、家はたくさんの業種の職人さんたちの技術が集まって成り立っています。竹を組み土壁の下地を作る小舞職人さん、土と藁を足で踏み込んで土壁を作ったり、漆喰を大釜で煮込んで仕込む左官職人さん、こういった伝統技術も今ではほとんど見ることができません。


この伝統技術は職人さん達の徒弟制度の中から生まれた技術です。最近の木造住宅の大半はプレカット工場で機械加工された材料が使用されています。大工さんはその予め加工された材料をプラモデルのように組み立てていく、一本一本の材料に職人さん達の魂が込められていたあの頃にくらべると、なんとも寂しい感じを受けます。このままだと、あと10年もすれば、墨付け、手刻み加工などの真の日本伝統建築文化は消えてしまうのではないでしょうか。この伝統建築の懸念材料として、手間が掛かり、非常に割高になるなどの、コストの問題があります。確かに家を建てることだけで考えると、その通りだと思いますが、総合的に判断すると決してそうではありません。「建物の寿命」、「二酸化炭素の削減」、「安全性」、「居住性」、「身体の健康」、これらを満たしてくれるのが日本の伝統建築なのです。


この技術を守るために今回、大分市にある緑豊かな街、「パークプレイス大分公園通り」の一画に、墨付け、手刻み加工、竹の小舞下地の土壁などを全面的に取り入れた、新建材や集成材を一切使用していない体感モデル住宅が完成いたしました。これからの将来を担う子ども達の社会勉強にも役立つように、手作業での加工状況を記録したビデオも上映しております。伝統文化の癒しの空間を是非ご体感ください。

カイケンコーポレーション代表取締役 兼行住宅アドバイザー 浦上 直

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